2024年5月2日

パンフォーカスと被写界深度と過焦点距離

ミラーレス一眼カメラとマニュアルフォーカスレンズ

ミラーレスカメラにオールドレンズを取り付けて写真を撮ることが多いのですが、
このようなフィルムカメラ時代のマニュアルフォーカスレンズには、被写界深度目盛が付けられています。
これを使ってパンフォーカスで、ストリートフォトをよく撮ります。

被写界深度とは、ピントが合っているように感じる奥行きのことで、
過焦点距離とは、この距離にピントを合わせると被写界深度が無限遠になる撮影距離です。
そして、過焦点距離の1/2が過焦点距離より手前の被写界深度になります。


パンフォーカス状態のレンズ

パンフォーカスとは近距離から無限遠までピントが合っている状態、つまり被写界深度内に入っている状態です。

実際の撮影で、レンズをパンフォーカスの状態にするには被写界深度目盛を使います。
例えば、このレンズでは絞りを16にセットして、被写界深度目盛の16に距離指標の無限マークの中心を合わせると、
反対側の16のところの距離指標は1.4くらいになっています。
つまり1.4mから無限遠まで、ピントが合ったパンフォーカスの状態になっているということです。

そして、中心指標(三角のマーク)の位置の距離指標は2.8くらいなので、過焦点距離は2.8mということで、
ピント位置から手前の被写界深度の距離1.4mは、過焦点距離の1/2になっています。


絞りF8のときの被写界深度

F8ならば3mから無限遠までの被写界深度で、6mが過焦点距離になります。

これとは逆に、この被写界深度目盛はピントを合わせたところから、
前後どこまでピントが合っているかを確認するときにも使います。
特にレンジファインダーカメラではファインダーで被写界深度を確認できないので、
レンズの被写界深度目盛は重要でした。


35mmフィルムカメラ用のレンズとAPSCセンサーカメラ

では、35mmフィルムカメラ用のレンズをAPSCセンサーのカメラで使った場合、
被写界深度はどうなるのでしょうか。

被写界深度を決める要素は下の3つだけです。
  1. レンズの焦点距離(焦点距離が短いほど被写界深度が深い)
  2. 撮影時の絞り値(絞り数値が大きいほど被写界深度が深い)
  3. ピントを合わせた被写体までの距離(距離が長いほど被写界深度が深い)
つまり、レンズと撮影距離だけで決まるので、センサーサイズは関係ないということで、
APSCセンサーのカメラでも、レンズの被写界深度目盛の通りでいいということです。

よくフルサイズに比べ、APSCやm4/3がボケないと言われるのは、同じ画角(写る範囲)での比較なので、
レンズの焦点距離が異なったり、撮影距離が違ったりするからでしょう。

例えば
  • フルサイズに50mmレンズ
  • APSCに35mm(換算50mm)レンズ
この場合は、同じ絞り値で同じ距離から撮影すると、どちらも同じ50mmレンズの画角になりますが、
APSCは焦点距離が35mmのレンズなので、フルサイズの50mmレンズよりも被写界深度が深くなります。

  • フルサイズに35mmレンズ
  • APSCに35mm(換算50mm)レンズ
この場合は、APSCの焦点距離35mmのレンズは、フルサイズの35mmレンズと同じ画角に合わせるには、
被写体から離れて撮る必要があるので被写界深度が深くなります。

センサーサイズでは影響を受けることはなく、センサー上ではフルサイズもAPSCもレンズの焦点距離、
撮影時の絞り値、被写体までの距離が同じなら同じ被写界深度ということですね。


絞り11で被写界深度F8を使う

被写界深度には、もう一つ許容錯乱円という基準があります。
ピントが合っていることにするボケの大きさの基準で、この大きさ以下が被写界深度内となります。

許容錯乱円の大きさは視力1.0の人が、ポストカードサイズ(対角18cm)に拡大した写真を、
45cm離れて見ることを基準としているようです。
このポストカードサイズに拡大する場合、フルサイズよりもAPSCの方が拡大倍率が大きくなるので、
許容錯乱円は小さくなります。

許容錯乱円の大きさはフルサイズで 0.03 mm、APS-C で 0.02 mm、マイクロフォーサーズなら 0.015 mm 、
35mmフィルムの場合は0.026mmが一般的らしく、フルサイズとAPSCに差は1絞り分くらいです。
なので、35mmフィルムのレンズをAPSCで使うなら、半絞りくらい絞った方がいいのかもしれませんが、
あまり気にしていません。

それよりも、オールドレンズでは、無限遠が正確に出ているか、指標が正しいかということもあるので、
使用レンズで撮影してみて、自身が納得できるパンフォーカス状態を確認することですが、
デジタルカメラだと簡単なので、それが一番ですね。

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