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2020年6月22日

Forever Saul Leiter

Forever Saul Leiter

2020年1月9日~3月8日まで開かれる予定だった「永遠のソール・ライター」展は、
新型コロナの影響で終盤は打ち切りとなってしまったようだ。

「ソールライターのすべて」展が開催されたのが、3年ほど前なのに、
今回また開催されたということは人気があるからだろう。


Deborah:Forever Saul Leiter

前回の「ソールライターのすべて」では、妹のデボラの写真はなかったが、
こちらには収録されていて、デボラはライターが写真を始めた頃の最初のモデルであったそうだ。
デボラを撮った写真は100点ほど発見されていて、ここでも1940 年代の写真が30頁にわたって収録されているが、
中でもこの作品が印象的だ。

このデボラの写真を見て、同じ名前のヒロインが登場する映画「Once Upon A Time In America」を思い出したのだが、
この時代のユダヤ系女性の名前としては多いのだろうか。

ソールライターは1952年にイーストヴィレッジ東10丁目に移転し、そこで写真を多く撮るのだが、
その南側はユダヤ移民居住区のローワーイーストサイドのシナゴーグを中心とするゲットーで、
川を挟んで「Once〜」のロケ地となったブルックリンのウィリアムズバーグという位置関係になる。


そばかす:Forever Saul Leiter

「Forever Saul Leiter」でも、ソール ライター構図は健在だが、あまりにも印象が強すぎて、最近は避けてしまうこともある。
そのためか、カラー作品ではなく22頁から40頁にかけてのユダヤ移民のゲーットーを思わせる、
モノクロームの写真に惹かれるのだ。

ソール・ライターといえば期限切れのポジフィルムで撮った、独特な構図と色表現のカラー作品が注目されるが、
それらはリアリズムを求めたものでなく、絵筆をカメラに置き換えたアートのようにも感じられる。
だが、この少女の攻撃的な眼差しや、デボラの上目づかいに訴えるような眼差しは、別な面を見せてくれ、
このようにストレートに被写体に向かったモノクロ作品も魅力的である。

2017年11月5日

All About Saul Leiter

ソール・ライターのすべて

「ソール・ライターのすべて」はBunkamuraで開催された回顧展に合わせて出版された写真本である。
回顧展の図録という役割でもあるが、写真部分だけで273ページもあるペーパーバックで写真集としても見劣りしない。


写真の大きさは同じでない

「Early Color」のほうが印刷が良いと評判だが手に入りにくく、今では高価になっている。
縦位置写真が多いのでページ全体を使っている場合は、このペーパーバックでも写真の大きさは変わらないと思う。

ページを捲ると最初にファッションとコマーシャル写真が続く、ここでも鏡や映り込みを使っているのが興味深い。
中でも「靴の広告」は俯瞰構図と傘という、ソール ライターのストリートフォトでよく見られるスタイルなのだ。
最初のページにある「私が望んだのは、撮影の結果がファッション写真以上の”写真”になることだった。」
という言葉通りファッション写真の枠を超えている。

さらにページを捲ると「T」が現れストリートフォトへと続いていく。
「赤いカーテン」「雪」「天蓋」「463」と、絵画を見ているようなカラー写真が続く。
カラーの間に「スカーフ」「帽子」「メリー」「ペリーストリートの猫」などのモノクロも収められているが、
カラーのほうがページ数も多く見入ってしまう。
特にカラー写真は日本文化や浮世絵などの影響を受けたからか、
見えない部分の気配を感じさせる構図や叙情的な描写をもたらしている。

そしてバーバラなどを撮った、デッサンのようなモノクロのプライベートヌードとペインディングで締めくくられている。


厚みのあるペーパーバックだ

約200点の写真が収録されていて、文字通り『All about Saul Leiter』だ。
これ一冊でソール ライターを俯瞰することができ、十分に彼の色を感じることができるだろう。
写真の余白に散りばめられたソール ライターの言葉も魅力的だ。

2017年の春に「Bunkamuraザ・ミュージアム」で開催された回顧展だが、
来年(2018年)の春に伊丹市立美術館で開催される予定なので楽しみである。

2017年10月24日

狭くて遠い構図


スナップ写真といえば広角レンズで一歩踏み込んで撮る、ということがセオリーなのだろう。
フィルムで撮っていた時は、よく28mmレンズでスナップをしていた。
けれど、デジタルで写真を撮り始めたころから望遠レンズでのスナップが楽しくなった。

Saul Leiter Foundation

望遠スナップといえばソール ライターを思い浮かべる。
彼の構図は狭い、そして主題となる被写体は遠い。
望遠レンズを縦位置で撮っているので狭く感じるのだろう。
広角レンズは横位置で広がり感が出るが、望遠レンズは縦位置で長焦点らしい狭い画角を感じることができる。

人の視界は横長なので、縦長の写真を見ると凝視した時のような視界の狭まりを強く感じるのだろう。
なので、ソール ライターの写真に縦長の構図が多いのもうなずける。
さらに手前に物を入れ、その奥に被写体を置いて狭い空間を強調している。
こうすることで、構図にも奥行きが出る。

望遠レンズだと、被写体の重なりと圧縮効果も生まれ、絵画のような色の重なりも作り出せる。
そして、影が少ないのも特徴的で、さらに海外の写真家では珍しい暈けも多く見られる。

この一貫した表現は、何かの意図を持って人間社会を撮るということではなく、
ひたすら瞬間の美しさ撮るというスタイルで、人はそのための一要素としか見ていないのだろう。
これらのカラー作品には、ソール ライターの画家としての視点が溢れているようだ。


Saul Leiter Foundation

モノクロームとカラーで明らかに表現が違う。
カラーでは縦位置が多いが、モノクロームでは横位置の写真も多く、
そして被写体に寄って撮っているのだ。
明らかに絵画ではなく、写真として意識しているのだろう。

カラーでは影があまり見られなかったが、モノクロームでは影が写っている写真もある。
これは色での表現でなく、光で表現するモノクロームのを意識しているのかもしれない。

ヴィヴィアン マイヤーは真四角フォーマットのモノクロ表現が魅力的だが、
ソール ライターは縦長のカラー表現に惹かれる。

Saul Leiter Foundation
http://saulleiterfoundation.org

2017年7月9日

パリ、ニューヨーク、フォトグラファー


「パリが愛した写真家」と「ロバート フランクの写した時代」を観た。

ロベール ドアノーとロバート フランクと対照的とも思える二人。
映画の作り方にもよると思うが、刺激的なアメリカを感じさせるロバート フランクよりも、
優しい眼差しで撮るロベール ドアノーの「パリが愛した写真家」のほうが楽しめた。

ニューヨークを撮った写真家といえばヴィヴィアン マイヤーが浮かぶ。
彼女は没後に評価された写真家だが、同じようにニューヨークを撮り、個人的な作品を一切発表せず、
晩年に出版された写真集によって脚光を浴びたのがソール ライターである。
ドアノーに通じる被写体への向かい方は、当時のニューヨークの写真家たちと一線を画すが、
これは独学で絵を描いていたことにもよるのだろうか。
そういえばフランスには、カルチェ ブレッソンのように絵を描いていた写真家が多くいる。


Saul Leiter

ファッションフォトを撮っていた彼の
「雨粒に包まれた窓のほうが、私にとっては有名人の写真よりも面白い」
という言葉に納得させられる。


Saul Leiter

そして、時折見られる写真の大半を覆い尽くすような大胆な構図も刺激的である。

カラーで撮ったニューヨークの色の美しさ、鮮やかだが刺激的でない色、光を感じさせる色、
これが絵画で培われた色の表現なのだろう。
カラーでストリートフォトを撮るときに頭の片隅に置いておきたい。


「写真家ソール ライター急がない人生で見つけた13のこと」
公開済み

彼のドキュメント映画、「写真家ソール ライター急がない人生で見つけた13のこと」はアップルストアなどでレンタルできる。

「Saul Leiter Foundation」で彼の写真や絵を見ることができる。
http://saulleiterfoundation.org

ソール ライター展(終了)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_saulleiter/point.html