2017年11月5日

All About Saul Leiter

ソール・ライターのすべて

「ソール・ライターのすべて」はBunkamuraで開催された回顧展に合わせて出版された写真本である。
回顧展の図録という役割でもあるが、写真部分だけで273ページもあるペーパーバックで写真集としても見劣りしない。


写真の大きさは同じでない

「Early Color」のほうが印刷が良いと評判だが手に入りにくく、今では高価になっている。
縦位置写真が多いのでページ全体を使っている場合は、このペーパーバックでも写真の大きさは変わらないと思う。

ページを捲ると最初にファッションとコマーシャル写真が続く、ここでも鏡や映り込みを使っているのが興味深い。
中でも「靴の広告」は俯瞰構図と傘という、ソール ライターのストリートフォトでよく見られるスタイルなのだ。
最初のページにある「私が望んだのは、撮影の結果がファッション写真以上の”写真”になることだった。」
という言葉通りファッション写真の枠を超えている。

さらにページを捲ると「T」が現れストリートフォトへと続いていく。
「赤いカーテン」「雪」「天蓋」「463」と、絵画を見ているようなカラー写真が続く。
カラーの間に「スカーフ」「帽子」「メリー」「ペリーストリートの猫」などのモノクロも収められているが、
カラーのほうがページ数も多く見入ってしまう。
特にカラー写真は日本文化や浮世絵などの影響を受けたからか、
見えない部分の気配を感じさせる構図や叙情的な描写をもたらしている。

そしてバーバラなどを撮った、デッサンのようなモノクロのプライベートヌードとペインディングで締めくくられている。


厚みのあるペーパーバックだ

約200点の写真が収録されていて、文字通り『All about Saul Leiter』だ。
これ一冊でソール ライターを俯瞰することができ、十分に彼の色を感じることができるだろう。
写真の余白に散りばめられたソール ライターの言葉も魅力的だ。

2017年の春に「Bunkamuraザ・ミュージアム」で開催された回顧展だが、
来年(2018年)の春に伊丹市立美術館で開催される予定なので楽しみである。

2 件のコメント :

ライチル さんのコメント...

ライチルです。そうですこの写真集を友人から頂いたのです。BLuesさんがすでにお持ちとは流石ですね。モノクロも好きですがカラーが煩くはなく随所の色合いの美しさに魅せられました。言葉も素敵でしたね。「写真家からの贈り物は日常に見逃されている美を時々提供すること」「どこで見たとか何を見たかという事ではなく、どのように見たかと言う事だ」「終わる事がない世界の小さな断片と思い出」などは手帳に書き留めました。ドアノーと言い素晴らしい写真家は含蓄のある言葉も残していますね。感銘するけれど私の感性と腕はついていけません。伊丹市美術館で春に開催なのですね。私も楽しみにします。

Blues Walk さんのコメント...

こんにちは。
この写真集だったのですね。
東京の回顧展までは行けなかったので、
この写真集だけを手に入れましたよ。
これだけの枚数の写真を見れるのは良いですよね。

ソールライターの言葉には、
写真の原点と基本を再認識させられますね。
撮影中、この言葉を思い出せばいいのですが、
撮ることに夢中になってしまいます(笑)

色と構図に魅せられるソールライターの生プリントを、
伊丹市立美術館で見られるのが楽しみですね。