2019年2月21日

新世界物語

新世界物語のカバー

北井一夫さんの「新世界物語」は1981年に出版されている。
1979年の秋から二年半に渡って撮った新世界、じゃんじゃん横丁、てんのじ村、旭町、飛田、釜が崎などの人々の風俗を、
写真と住人の話で綴った写真集である。

北井一夫さんといえば「抵抗」「三里塚」「村へ」「フナバシストーリー」「いつか見た風景」などがよく知られているが、
この「新世界物語」はローカルな町だからか、あまり話題にならないようだ。


カバーを外すとモノクロ写真が

カバー表紙のカラーイラストは写真集としては不評だったようだ。
カバーを外すとカバーの裏と同じモノクロの写真が現れるが、この方が新世界のリアル感か増すように思える。

浪速クラブの緞帳が開く写真から物語が始まり、
「兄さん、新世界の写真撮りに来たんか。ここら物騒やから気いつけや。わしが案内したってもええで。」
と声をかけられる「パンサとケン師」、そして「飛田の楊貴妃」「てんのじ村の芸人」「隊長の串カツ屋」
「酒とタバコ」「五歳からの漫才師」と、6編の話が挟まれているが、どれもディープな町に相応しいディープな内容だ。
そして浪速クラブの緞帳が閉じる写真で物語が終わる。

今はドラッグストアになっている天王寺の「ミス タイペー」、今も残っている新世界の映画館、
パチンコ ASAHIになっている背の高い看板の建物、廃線になった南海天王寺支線の今池町駅など懐かしい風景もあって、
この町を知る人には楽しめる写真集である。

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