2024年9月30日

Canon L3の使い方

Canon Model L3

Canon L3は1957年11月に発売されたレンジファインダーカメラです。
この機種の前にはトリガー巻き上げのCanon VTが発売されているので、順当ならばCanon VLなのでしょうが、
L1、L2、L3とLシリーズ3機種が発売されています。

その後Vシリーズ、VIシリーズ、7シリーズと続くので、Lシリーズはスピンアウトモデルのようになりました。
おそらく"L"というのはレバー式の"L"なのでしょうが、この時期ライカがM1、M2、M3と発売していたので、
その下のアルファベットのL1、L2、L3とも考えてしまいます。
そういえば、映画「2001年宇宙の旅」に登場するコンピュータ「HAL」は、
コンピュータメーカー「IBM」のそれぞれ一つ下のアルファベットでした。

L1はグッドデザイン賞を受賞したカメラで、L3も同じデザインなので完成度は高いです。
Lシリーズはコストダウンということでセルフタイマーは付けられてなく、L3はさらに最高シャッター速度は1/500、
布幕シャッター、ノブ巻き戻し、シンクロソケット無し、というシンプルなレンジファインダーカメラです。
このシンプルさがストリートスナップにピッタリで、廉価モデルでありながらプロ機のような風格です。

そういえば、Fuji X-E4もグリップ、フォーカスモードレバー、内蔵フラッシュをなくし、
ボタン、ダイヤルを減らしてコストダウンを図っていました。

こういうレンジファインダーカメラL3の使い方です。


巻き戻しリングをAの位置に

まずはフイルムを入れます。
巻き戻しリングが、Aの位置になっていることを確認します。


巻き戻しノブをポップアップ

巻き戻しノブのロックレバーを、矢印方向に押すと巻き戻しノブがポップアップします。
L1はクランク式巻き戻しですが、このL3の羽のような形をしたレバーでノブが飛び出すというギミックもいいです。


裏蓋を開ける

底にある開閉ツマミを左に回し、裏蓋止め具を下に引くと裏蓋が開きます。

この頃のカメラは、まだフィルムマガジンが使える仕様になっているので、このような開閉ツマミが付いています。
これは開閉ツマミを回すことで裏蓋のロックや解除をすると共に、マガジンのスリットを開閉するためです。
普通のパトローネのフィルムを使っている時は、裏蓋のロックと解除のためだけです。


スリットとツメ

巻き取りスプールの下のギザギザ部分を指で矢印方向に回して、白い線が見えるようにします。
スリット下部の白線が曲がったところにフィルムを引っ掛けるツメがあります。


フィルムをスプールに差し込む

スプールのスリットにフィルムの先端を差し込み、スリット下部のツメにフィルムの2つ目の穴を引っ掛けます。
これでスプロケットギヤにフィルムの穴がきちっとハマるはずです。

このようなツメは、ニコンFのスプールにも付いています。


フィルムをセットする

巻き戻しノブをさらに引き上げてフィルムカートリッジをフィルム室に入れた後、巻き戻しノブを押し込みます。



少しフィルムを巻いて、フィルムの穴が上下ともスプロケットギヤにハマっているか確認します。


裏蓋を閉じる

裏蓋を閉じて、開閉つまみを右に回して裏蓋をロックします。


空写し

巻き戻しノブをポップアップさせ、巻き戻しノブを矢印方向に止まるまで回して、
フィルムパトローネ内のフィルムのたるみを取ります。
巻き戻しノブに抵抗を感じ回らなくなったらフィルムのたるみが取れているので、巻き戻しノブを押し下げます。

レンズにキャップをして、2回空写しをします。

巻き上げレバーでフィルムを巻き上げた時に、巻き戻しノブが矢印と反対方向に回転していれば、
フィルムは正しく巻き上げられています。

この時、シャッターボタン近くの赤い点も回転しますが、これは巻き上げギアの回転を示しているので、
フィルムが正しく巻き上げられているかは、必ず巻き戻しノブの回転で確認します。

巻き戻しノブの回転でフィルムの巻き上げを確認するのは、フィルムカメラの作法です。


フィルム枚数と感度のセット

ボディの角にある、フィルム枚数合わせギアを回してフィルム枚数をセットします。
減算式のフィルムカウンターなので、36枚撮りのフィルムの場合は36とセットします。
ギアを回す方向はシャッターボタンのある方向です。

巻き上げレバー軸の上面を回して、フィルム感度表示窓に使用フィルムの感度をセットします。
ISO 8〜ISO400と白昼光カラーフイルム用の赤点、タングステン光カラーフイルム用の青点がありますが、
このカメラは露出計が付いていないのでこれはメモです。

こういう表示方法でも当時はモノクロが主流だったことが伺えます。
このような感度メモは、プロカメラマンのように同じカメラを何台も使った場合や、
長期間フィルムが入ったままにした時に、入っているフィルムの種類が分かるようにするためです。


フイルムの巻き上げ

フィルムの巻き上げは巻き戻しリングの指標がAの位置で、巻き上げレバーを止まるところまで回します。
小刻み巻き上げもできます。

シャッター機構はバルナック型なので、巻き上げている時はシャッターダイヤルも回転します。
巻き上げ終わると、シャッターダイヤルの中央にある指標が右横向きになっているので巻き上げ済みか分かります。


シャッター速度のセット

シャッターダイヤルは高速用と低速用に別れたバルナックタイプです。
低速シャッターは1/30にセットします。


高速シャッター速度のセット

高速シャッターはB、1/60、1/125、1/250、1/500で、ダイヤルを引き上げたまま回してセットします。

バルナックライカのようにシャッター指標とシャッターダイヤルが離れている場合は、
フィルムを巻き上げてからシャッターダイヤルを回さないと正しくセットされないか、故障したりしますが、
L3は、シャッター指標とシャッターダイヤルが同軸で一緒に回転するので、
巻き上げの有無にかかわらずシャッター速度をセットすることができます。

シャッターボタンを押すと、高速シャッターダイヤルが回転するので指が触れないように注意します。


低速シャッター速度のセット

低速シャッターは高速シャッターダイヤルを30-1にセットしてから、低速シャッターダイヤルをセットします。
低速シャッターはT、1、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30です。

T(タイム)でシャッターを押すとシャッターは開いたままになりますが、
低速シャッターダイヤルを1の指標に回せば閉じます。


 ファインダーセレクトとピントの合わせ方

L3はレンジファインダーとビューファインダーが一眼となったレンジビューファインダーなので、
ファインダー中央の二重像を重ねてピントを合わせます。
素通しガラスなので、一眼レフのように前ボケや後ろボケは確認できません。

接眼部右下のレンジビューファインダーセレクターを回すとファインダーが、
35mmレンズ用、50mmレンズ用、RF用(拡大)に変更できます。
L3にはブライトフレームがないので、フレームが切り替わるのではなくてファインダー倍率が変化します。


巻き戻しリングをAの反対方向に回す

フィルムのセットの状態によって、36枚撮りフィルムでも36枚以上撮れることがあるので、
フィルムカウンターではなく、巻き上げレバーが途中で止まってフィルムの巻き上げが出来なくなったら終了です。

フィルムを取り出す時は、光が入らないようにレンズキャップ を取り付けます。
フィルムの前に布製のシャッター幕しかないレンジファインダー機の作法です。

巻き戻しリングをAの反対方向の黒三角マークに回します。
シャッターボタンの下側に巻き戻し指標の赤点があります。


フィルムの巻き戻し

巻き戻しノブの止めレバーを矢印方向にスライドさせると巻き戻しノブが飛び出します。
シャッターボタンの下側にある、巻き戻し指標の赤点の回転が止まるまで矢印方向に回します。
指標の赤点の回転が止まった時点では、フィルムは完全にパトローネに巻き取られず先端が出ている状態です。


フィルムを取り出し

フィルム装填時と同じ要領で裏蓋を開け、さらに巻き戻しノブを引き上げてフィルムを取り出します。


Canon Model L3

フィルムカメラでも1950年代のレンジファインダーカメラを使う時は、独特の操作が必要です。
L3のような布幕シャッターの場合は、シャッター幕焼けを防ぐために、太陽を写しこまないことや、
体の方にレンズを向けたり、レンズキャップをして持ち歩くというような注意も必要です。

けれど、機械式カメラの操作感を楽しむには、この時代のレンジファインダーカメラが一番いいかもしれません。

2024年9月12日

2024年9月7日

2024年9月5日

モダンジャズ名盤

スイングジャーナル別冊

スイングジャーナルのジャズ名盤本である。
内容はというと毎度同じで、記載されているアルバムや紹介記事も変わり映えしない。

これが発売された当時でも、ウンチク、エピソードなどは出尽くしていて、目新しいものはないので、
こういう本は1冊あれば十分だが、初めてジャズを聴こうとしている人には必要な資料となるだろう。


ジャズ ヴァイナル レコード

レコード棚から4枚取り出して、名盤を並べてみた。

左上は名盤の常連「Somethin' Else」
シャンソンの「枯葉」をハードバップに展開。
テーマを演奏して各パートがソロを取り、最後にテーマを演奏するという、
典型的なハードバップ スタイル。

Side 1
1. Autumn Leaves     10:55
2. Love for Sale     7:01
Side 2
1. Somethin' Else     8:15
2. One for Daddy-O     8:26
3. Dancing in the Dark     4:07
  • Cannonball Adderley (alto saxophone)
  • Miles Davis (trumpet)
  • Hank Jones (piano)
  • Sam Jones (bass)
  • Art Blakey (drums)

右上はジャケ写で有名な「Cool Struttin'」
事務職員の女性を何度も歩かせて撮ったといわれ、ジャケ写だけでなく内容も秀逸。
これも典型的なハードバップである。
ハードバップはモダンジャズの中でも聴きやすいスタイルだ。

Side 1
1. Cool Struttin'     9:23
2. Blue Minor     10:19
Side 2
1. Sippin' at Bells     8:18
2. Deep Night     10:19
  • Sonny Clark (piano)
  • Art Farmer (trumpet)
  • Jackie McLean (alto saxophone)
  • Paul Chambers (bass)
  • Philly Joe Jones (drums)

左下は「Blues Ette」
トロンボーンの名盤で、これもジャケットがいい。
モダンジャズでは、トロンボーンはサックスやトランペットに埋もれがちだが、
このアルバムで聴くと良さが分かる。

Side 1
1. Five Spot After Dark     5:18
2. Undecided     7:09
3. Blues-ette     5:31
Side 2
1. Minor Vamp     5:12
2. Love Your Spell Is Everywhere     7:07
3. Twelve-Inch     6:28
  • Curtis Fuller (trombone)
  • Benny Golson (tenor saxophone)
  • Tommy Flanagan (piano)
  • Jimmy Garrison (bass)
  • Al Harewood (drums)

右下は「Midnight Blue」
ギターの名盤、ピアノに埋もれがちなギターだが、これはピアノレスにしてコンガを入れたのがいい。
ジャズギターはあまり聴かないが、これはブルージーで好きな一枚である。

Side 1
1. Chitlins con Carne     5:30
2. Mule     6:56
3. Soul Lament     2:43
Side 2
1. Midnight Blue      4:02
2. Wavy Gravy     5:47
3. Gee, Baby, Ain't I Good to You     4:25
4. Saturday Night Blues     6:16
  • Kenny Burrell (guitar)
  • Stanley Turrentine (tenor saxophone)
  • Major Holley (bass)
  • Bill English (drums)
  • Ray Barretto (conga)

この4枚のうち3枚がブルーノートで、やっぱりブルーノートに名盤が多いのかも。

これらのアルバムでピアノ、トランペット、サックス、トロンボーン、ギターのジャズが楽しめるのと、
難解な演奏ではないので、これからジャズを聴こうとしている人にはお勧めのアルバムである。

2024年9月3日

SEVENTH AVENUE SOUTH

SEVENTH AVENUE SOUTH  (Vinyl)

このジャケットに惹かれて買ってしまう一枚だが、南佳孝のトップアルバムだと思っている。
7作目のアルバムでSEVENTH、南 佳孝の南で SOUTHということらしいが、
静かな夜にヴァイナルレコードで聴きたい大人のアルバムである。

ジャケットの絵はエドワード ホッパーの「夜更かしの人々 Nighthawks」で1942年の作品だ。
ホッパーの作品はストリートフォト、スナップフォトを見ているようで、説明しすぎない、余白を作る、
大胆な構図というように写真的であり、また都会の孤独を感じさせてくれるので、
このアルバムコンセプトに合っていると思う。

このアルバムは1982年にリリースされた初のN.Y録音アルバムで、レオン ペンダ―ヴィスがアレンジを担当、
フュージョン、ジャズのミュージシャンを集めて制作したということだが、
ジャズということではなく、ジャジーな曲風という感じである。

サンボーンのアルトサックスのソロから入る一曲目の「Cool」でJazzyな空間に刺激され、
名曲「Scotch and Rain」で都会の夜に引き込まれていく。

ただ、ラストの「Chat Noir(黒猫)」がトニー レヴィンのアレンジなので少し異質。
「Sketch」で終わっていてもいいが、、、

このようなことは、大瀧詠一の「A LONG VACATION」でも気になった。
ラスト曲の「さらばシベリア鉄道」で、それまでは夏のイメージだったのが、急に酷寒のシベリアになる。
前曲のラストで拍手と手拍子を入れて、アンコールの体裁をとっているが違和感を感じた。
この「SEVENTH AVENUE SOUTH」では手拍子の代わりに「Sketch」で切り替えをしているのだろう。

「モンローウォーク」、「スローなブギにしてくれ」、「スタンダードナンバー」、「ブルーズでも歌って」
のようなヒット曲はないが、バランスの取れた、渋い佳曲揃いで気持ちの良いアルバムだ。

南佳孝のアルバムをヴァイナルレコードでというなら、真っ先にお勧めしたい一枚である。