2020年6月3日

危険な関係のブルース

les liaisons dangereuses:Duke Jordan 1962年

「危険な関係のブルース」といえば、サウンドトラックでのアートブレーキーとジャズメッセンジャーズで大ヒットしたが、
映画「危険な関係」では作曲者はデューク ジョーダンではなく別人の名前がクレジットされていた。

このレコードは、これに見かねたチャリー パーカーの未亡人ドリス パーカーが、
経済的支援を含めデューク ジョーダンのために、1962年に録音したものである。


危険な関係のブルース:デューク ジョーダン

1950年代後半はヌーベルバーグ、ジャズではハードバップが隆盛の頃で、
多くのジャズミュージシャンがアメリカでの迫害を逃れてフランスへ移住していた。

フランスとジャズの関係は深く、アメリカ南部を支配していたフランス人と奴隷の間に生まれたクレオールをフランスへ留学させ、
当時の音楽や文化を学ばせたが、それが奴隷解放後のジャズの発展に貢献したと言われているようだ。
このようなことから、黒人に寛容なフランスに移り住むジャズプレーヤーも多かった。

この頃は、フランス映画でのジャズの再評価で「シネ ジャズ」が広まり、
1957年には「死刑台のエレベーター」(マイルス デイビス)や「大運河」(MJQ)が製作され、
このようなサスペンス映画にモダンジャズがよく使われるようになったのである。
そのほか「危険な曲がり角」(スタン ゲッツ)、フィルムノアールの傑作「殺られる」(アートブレーキー)、
「彼奴を消せ」(バルネウイラン)などもある。
けれど、このようなシネジャズというスタイルを取り入れた映画では、音楽の使われ方がパターン化して飽きられてしまい、
ブームは50年代で終わってしまった。

このアルバムには「No Problem」というタイトルで3曲収められていて、「No Problem #1」は典型的なハードバップ、
「No Problem #2」はラテン風のピアノトリオ、「No Problem #3」はスローブルース風だが、
やはりジャズ メッセンジャーズで馴染みのある「No Problem #1」がいい。


危険な関係


この4Kリマスター版でもセロニアス モンク、アート ブレーキーとなっていて、デューク ジョーダンの名がないのだが。

映画に出て来るナイトクラブの演奏シーンは、デューク ジョーダン、ケニー ドーハム、バルネ ウィラン、
ポール ロベール、ケニー クラークが出ているが、映画には出なかったアート ブレイキー、リー モーガン、
バルネ ウィラン、ボビー ティモンズ、ジミー メリットの演奏に置き換えられている。

この「危険な関係のブルース」の曲調は映画の内容には合っていないように思えるが、これはナイトクラブのシーンで、
全体ではセロニアス モンクの演奏が多く使われている。
やはり危ないストーリーの背景にはセロニアス モンクのような、ちょっと危ない感じがいいようだ。

作曲者のトラブルや演奏の差し替えとか、ストーリーも含め何かとややこしい「危険な関係」である。

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