2022年5月11日

「木村伊兵衛を読む」

「木村伊兵衛を読む」

昭和54年12月5日に発刊された、アサヒカメラの増刊号である。
「木村伊兵衛を読む」というタイトルで木村伊兵衛氏の仕事をとりあげている。
もちろん作品も多く掲載されているが、興味を引くのが巻頭のコンタクトプリントと巻末の全ネガリストで、
コンタクトプリントはフィルム約6本分が6ページに渡って掲載されている。
このコンタクトプリントをじっと見ていると、何に興味を持って、どういう構図で、どういう露出で、何カットとか、
色々なものが見えるようで刺激になる。


「佃島にて」

コンタクトプリントは
1ページ目は「越中島付近で」子供を抱いた女性のアップが続く。
2ページ目は「秋田にて」これはよく知られている。
3ページ目は「上海にて」
4ページ目は「佃島にて」下町スナップがよくわかる。
5ページ目は「ローマの泥棒市」
6ページ目は「自宅付近で」

完成された作品よりも、このように撮影の過程が見れるのはいい。

もう一つ見えるのが、右上か右下かという縦位置の構え方で、このベタ焼きを見る限り右上の構え方をされているようだ。
このようなネガリストを見ているとワクワクしてくるのと、コンタクトプリントというのは、
なかなか見ることが出来ないので貴重である。

全ネガリストは整理番号、テーマ、年月日の表になっている。
特にテーマを眺めていると、いつもライカを持ち歩いていたことを実感させられ、足どりが見えるようである。


「月島にて」1954年2月

収録されている中では「月島にて」が一番気に入っている。
大勢の人を捉えているが、一人として無意味な存在がいないことが感じられる。
左側の走っている子供、右側の子供を背負った女性、その後ろの紙芝居の自転車に群がる子供、
戦後8年が経過した頃だが、生き生きとした光景で時代の記録、生活の記憶である。