2019年6月23日

アサヒカメラ 1976年10月 増刊 「村へ」

「村へ」北井一夫

1974年のアサヒカメラで連載が始まった「村へ」の後、
第一回木村伊兵衛写真賞受賞した1976年に再度特集として発行された増刊号である。

高度経済成長で変化していく田舎の暮らしをドキュメントしたものだが、ストレートな視線で事実を描写し、
村で生活する人たちの姿を捉えている。
この連載は、この後も「そして村へ」と79年まで続いている。


「市場」より

掲載されている130枚ほどの村の情景の中でも沖縄の市場を撮った、この1枚が好きだ。
子供を抱いて通りすがる日常の光景だが、まっすぐ正面を見る表情に力強さと強い意志を感じる。

連載されていた時はグラビア印刷だったように思うが、よく覚えていない。
この増刊号はオフセット印刷なのだろうか、少し暗部が潰れているように思うが、
この980円という価格ではグラビア印刷はできないのだろう。


Canon F1 広告

この増刊号の広告は「村へ」に関連した機材が中心になっている。

初期には「キヤノンF1」を使っていたからだろう。
この広告のF1は後期型で、標準価格はボディのみが104,000円、50mm F1.4付が135,000円となっている。
この頃の初任給はいくらだったのだろうか。

広告の中では「プロの道具として設計されている」「カメラ史上、初の本格的システムカメラ」
「モントリオールオリンピックの公式カメラ」などと書かれている。
広告ロゴも「Canon F-1 for professional」なのだ。
そういえば、正式には「F1」ではなく「F-1」だった。


Leitz Minolta 広告

そして一番多く使われていた「ライツミノルタCL」は、レンジファインダーらしいオールドフォトをモチーフにした渋い広告で、
この時のCLの標準価格はボディが76,000円、40mm F2が34,000円、90mm F4が52,000円となっている。
ボディに比べると90mm F4が割高のような気もするが、ライツ設計だからか。


Leica M5 広告

そして裏表紙には、木村伊兵衛写真賞の副賞でもあった「ライカM5」のシュミットの広告が入っている。

ちなみに表紙を開いたトップページは「ニコンF2フォトミック」の広告だが、
雑誌としては非常に広告が少なく、これらの他にはミノルタ110ズーム、マクセルの電池とナショナルのストロボの広告だけである。

このように、広告も含めて「村へ」の増刊号を編集しているのも粋なものだ。

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