2023年10月22日

ジャズ ロフト:ユージン スミスの記録

映画「ジャズ ロフト」

「ジャズ ロフト」は、ユージン スミスが1950年代半ばから住んでいた、マンハッタンのロフト時代の写真や、
ジャズ ミュージシャンとの交流のドキュメンタリーで、写真から見たり、ジャズから見たりと、
それぞれを楽しめる映画である。

写真としては、レンブラントを思わせるような光を作り出す「漂白」に関する話や、
少しだけだが、覆い焼きの手の動きなども見られて、
フィルム写真、特にモノクロ写真は、暗室作業も含めての作品作りが基本だということを改めて教えられる。

ライフ時代、マグナム時代の写真や従軍カメラマンとして沖縄戦で重傷を負い、
2年の療養後に自分の子をモデルにして撮り、復帰のきっかけとなった「楽園への歩み」のことにも触れている。

写真を嫌がるジャズミュージシャンだが、自然なシーンで撮られているのは、
「存在を感じさせない撮影だった」という、ミュージシャン達の言葉からも明らかであり、
これは撮影者の気配を消すという、ストリートスナップの基本にも通じる話だろう。

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録音としては写真に専念するため家族と離れ住んだ、マンハッタン6番街のロフトをジャズセッションの場とした、
ビバップ、ハードバップというジャズ全盛期の音の記録である。

ミュージシャンだけでなく、様々なアーティストが集まるロフトの至る所にマイクを取り付け、
そこで繰り広げられた日常の全ての音を、写真を撮るようにオープンリールのテープレコーダーで録音している。

ジャズミュージシャンたちのセッション、会話や電話の録音、特にタウンホールでの名演のリハーサルで、
セロニアス モンクのピアノ曲をオーケストラに音を振り分ける際の混乱の話は興味深い。

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窓から流れ込む街の騒音、暗室作業や写真の選別の時に絶えず流れる音楽。
ジャズミュージシャンの写真や、ロフトの窓際にカメラを並べて下の通りを撮った写真から音が感じられるのは、
録音だけではなく、写真でも音を撮るということなのだろうか。

部屋中に溢れる写真、レコード盤、オープンリールテープ、機材、ここではカメラなどについては語られてなく、
あくまでも写真であり、それとジャズや生活の音とのフュージョンなのである。

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