2019年5月15日

新寳島:手塚治虫

完全復刻版 新寶島

これは小学館クリエィティブが2009年3月に発売した「完全復刻版 新寶島 」である。

「新寶島」は1947年1月25日に手塚治虫が発表した漫画デビュー作だが、
原作、構成は酒井七馬で作画は手塚治虫という共作という形をとっている。

この「新寶島」を含む10冊ほどを子供の頃にもらったが、今記憶にあるのは
  • 新寶島(1947/01/30 育英出版)
  • ロストワールド(1948/12/20 不二書房)
  • メトロポリス(1949/09/15 育英出版)
  • ファウスト(1950/01/15 不二書房)
  • 平原太平記(1950/01/20 東光堂)
  • 来るべき世界(1951/01/10 不二書房)
である。

この復刻版はブックケースにブックカバー付きの「新寶島」と「新寶島読本」というブックレットが収められている。
当時持っていたものには、もちろんブックケースもブックカバーもなかったが、
ただ、購入後に付けたものだろう、パラフィン紙で表紙が保護されていたのを覚えている。


新寶島読本

この「新寶島読本」には「新寶島」にまつわる当時のいきさつが語られていておもしろい。

「新寶島」の初版は手塚治虫の原画を写真製版したものでなく、版下職人が原画を手描きでトレースして製版した描き版であり、
さらに酒井七馬によって60ページほども削除され、また多くの描き換えやセリフの書き換えもされたことなどから、
手塚治虫自身の作品とは言えないということで、長い間復刻が許されなかったようだ。


冒頭の見開き4コマ

当時の一般的な手法であった、舞台を見るような平面的な横の動きの描き方ではなく、
「動作のピークを捉える」ことや、「スローシャッター的表現」といわれる写真表現にも通じるような描き方だといわれるが、
冒頭のスポーツカーが走る4コマだけでも映画的なカットで、これからの物語の展開に引き込まれていく。

様々ないきさつの末に発行された「新寶島」だが、そのようなことを子供の頃は知る由もなく、
繰り返し読んで楽しんだものだった。
今、大人が読んで面白いものではないかもしれないが、その後の劇画やアニメなど、
複雑なストーリー展開や描写をした、そのようなものと比べるものではないのだろう。

手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL
https://tezukaosamu.net/jp/

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